特集
プラトンの肖像彫刻(シラニオンのギリシア原作にもとづくローマ時代の模刻)

プラトン

西洋で最初の言語哲学。対話篇『クラテュロス』(前4世紀)を、二つの立場——名前は「自然」か「取り決め」か——から、語源の奔流、文字の音、そしてイデアへの転回まで。ギリシア語原文で読む。

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プラトン『クラテュロス』を読む——名前は「自然」か「取り決め」か、西洋で最初の言語哲学

ものの名は、自然にそう決まっているのか(フュシス)。それともただの取り決めか(ノモス)。紀元前4世紀、プラトンはこの問いだけで一篇の対話篇を書いた。西洋で最初の、まとまった言語哲学。ソクラテスと二人の論客のやりとりを、ギリシア語原文とやさしい図で。

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フュシスかノモスか——名前の「正しさ」をめぐる二つの立場

ヘルモゲネスは言う——どう呼ぼうと、そう呼べば正しい。ソクラテスはこれを崩す。ものには勝手に決められない在りかたがあり、「名づける」もまた正しさのある行為だ、と。ただしそれは、クラテュロスの自然説をそのまま認めることではない。5世紀の「自然か掟か」論争を、言語に当てはめた対話。

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名前は「道具」である——梭(ひ)と、名前をつくる立法者

織機の梭が糸を分けるように、名前はものの在りかたを分けて教える道具だ。ではその道具を作るのは誰か——「職人のなかで最も稀な」立法者。そして、できた名前を使い、良し悪しを判定するのは弁証家である。

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語源の奔流——名前は理論を宿す(そしてそれは冗談か)

対話の半分以上を占める中央部で、ソクラテスは神・徳・自然物の名を140ほど語源分解してみせる。そのほとんどが「流れ」「運動」を含む。最初の名づけ手たちは、万物流転というヘラクレイトス的な世界観を名前に埋め込んだ——冗談とも本気ともつかぬ、この長い実演をどう読むか。

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名前は「声によるまね」——ρ は運動、λ はなめらかさ

それ以上分解できない「一次の名」は、どうやって対象を表すのか。ソクラテスの答えは、声によるまね(ミメーシス)。ρ は舌がふるえるから運動を、λ は舌がすべるからなめらかさを表す——西洋で最初の音象徴論であり、2300年後にソシュールが名指しで否定する相手でもある。

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名前からは真理を学べない——『クラテュロス』の結末とイデア論

音のまねだけでは名前は成り立たない、と認めたソクラテスは、取り決めを議論に戻す。そして自然説の核心を突く——最初の名づけ手には、手本にする名前がまだ無かった。ならば知は名前の手前にある。対話は、変わらぬ「美そのもの」へと踏み出して閉じる。

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