アリストテレス
プラトンが未決のまま残した問いに、弟子が答えを出す。『命題論』(前4世紀、『オルガノン』第2書)を、取り決めによる記号、名詞と動詞、真偽の座、対立の四角形、そして「明日の海戦」まで。ギリシア語原文で読む。
アリストテレス『命題論』を読む——ことばは「取り決めによる記号」、真偽が宿るのは文だけ
プラトンが未決のまま残した「名前は自然か取り決めか」に、弟子アリストテレスは短く答えを出す——ことばは取り決めによる記号だ。そして真偽は語ではなく、語を組み合わせた「主張文」にだけ宿る。『オルガノン』第2書、14章の緻密なエッセイを、ギリシア語原文とやさしい図で。
「取り決めによる」——アリストテレスがクラテュロスに与えた答え
名詞の定義に、アリストテレスは一語を差し込む——「取り決めによって」。自然によって在る名前は一つもない。けものの鳴き声は自然に何かを表わすが、名前ではない。プラトンが保留した二択に、弟子はノモスの側で決着をつけた。それが2000年の主流になる。
名詞と動詞——動詞は「時」をいっしょに示す
「健康」は名詞、「健康である」は動詞。違いは何か。アリストテレスによれば、動詞は意味に加えて「いま在ること」——時——をいっしょに示し、つねに「何かについて言われるもの」の記号である。文を組み立てる二つの部品と、両者を結ぶ「=である」の謎を、原文から。
真偽が宿るのは「主張文」だけ——祈りは論理学の外
「雨が降っている」は真か偽になる。「雨が降りますように」はどちらでもない。アリストテレスは、文のうち真偽をもつもの——主張文(アポファンティコス)——だけを論理学の対象とし、祈り・命令・問いを修辞学と詩学へ送り出す。「命題」という単位が、ここで生まれる。
肯定と否定、全称と特称——「対立の四角形」の起源
「すべての人間は白い」と「どの人間も白くない」は、同時には真になれないが、同時に偽にはなれる。「すべての人間は白い」と「白くない人間がいる」は、必ず一方が真で一方が偽。アリストテレスが第7章で整理したこの関係が、中世論理学の「対立の四角形」になった——そして現代論理学ではその一部が崩れる。
明日、海戦は起こるか——未来の偶然と決定論
「明日、海戦が起こる」という文は、いますでに真か偽か。もしそうなら、明日のことはすべて必然で起こり、思案も準備も無意味になる。『命題論』第9章、論理学史でもっとも議論された一章。アリストテレスの答えは——選言の全体は必然、どちらの項もまだ未定。